毎年恒例ともなりました地元中学生による職業体験です。
今回も愉しく実施させて頂きました。
こうした職務体験プログラムというのは、まず、普段の職務とはイレギュラーな部分が入りますので、まさにこちらも、体験して頂くということを楽しみながらというスタンスが必要です。
教えることは、これからの飲食店における重要なポイントともなりますし、子供たちの社会への理解を考えれば、一石二鳥であり、地元密着店を目指すお店にはより良い刺激にもなります。
まずはホールの仕事です。
提供もテキパキとこなし、しっかりと笑顔で配膳ができていますね。
この日は、常連でもある元チェアスキープレイヤーの野島氏もお越し頂いていたこともあり、車いすユーザーとの接点などもひじょうに勉強になったと思います。
一通りの仕事をすれば、お腹も減る時間。
飲食店ならではのメリットとも言えるまかないの時間です。
なかなかこの世代は本格お蕎麦というモノに触れない世代でもあるので、これを機に美味しさを知って頂いて、お父さんに「蕎麦食べに行こうよ!」ってなれば、そんな嬉しいことはありませんね。
そして、西鶴間増田屋の職業体験の山場でもある、そば打ちです。
そば打ちを体験できる蕎麦屋さんは、この日本でも数少ない希少な体験ができる店舗であります。
そば打ちというのは、ごく普通の料理とは違い、石油でできた大量生産される道具や、電気調理器具などは一切使いません。
木材を手作りした道具だけを使って、あとは自分の身体ひとつで仕上げる、料理の基本中の基本でもあります。
弥生時代、江戸時代から続く手法で、今も仕上げる、素晴らしい技法なんです。
そば粉とつなぎを混ぜたモノに水を入れて生地を作る作業です。
これを水回しと言います。
とにかく手を一生懸命回して粉の中に水分を含ませて行きます。
すると、ただの粉だったモノに粘りが出てきます。
これをまとめる粉が玉になってきます。
この玉に手で力を入れてこねることが、「練り」と呼ばれる工程となります。
ここは力の要る作業です。
まわりの人がしっかりと鉢を押さえて、共同作業になりますね。
こうしてできた練り玉を、今度は平たく延しして行きます。
最初は手のひらで。
ある程度広がったら、今度は麺棒を使ってより広く大きく広げて行きます。
難しいけど、とってもおもしろい作業です。
道具をうまく転がして生地を均一に平たく薄く伸ばして行きます。
薄くなって来ると破れやすくもなるので、素早さとともに丁寧に繊細に手を使うことが大事ですね。
麺棒にくるくるっと巻いたり広げたり、食材の表面の様子を見ながらなかなかうまい手付きでやっていますね。
そうして広げた生地を、麺体と言います。
これを畳んで、今度は細く切って行きます。
そばになる瞬間が見えますよ。
まな板の上に蕎麦がくっつかないように打ち粉というモノを振り、一本一本切って行く作業ですが、上から下に切るのではなく、前方にスライドしながら蕎麦の断面が四角になるように仕上げます。
家庭料理のような包丁とはまったく違う大きさですから、しっかりと集中して刃物と対話しなければなりません。
蕎麦を切る時に使う定規が「こま板」と言われる道具です。
田舎蕎麦などは、このこま板を使わない技法もありますが、江戸の細切り蕎麦は、必ずと言っていいほど、この道具を使います。
切った後に、包丁の腹でこま板を移動させて、切り幅を調整するわけですね。
蕎麦のできる工程を一通りやることで、蕎麦の一本一本を無駄にしてはいけないということがわかると思います。
食というのは、自分で作ることをしないと、伝わらない部分があります。
飲食店の仕事とは、ホールの提供だけの仕事ではなく、なにかを作る仕事でもあり、作る材料をしっかりと管理する仕事でもあり、もちろん、より安くより美味しくより速くお客様に安全にお召し上がり頂く仕事です。
大きなくくりで言えば、仕事とはこうして全体像を見て決める必要性があり、たとえ一部をまかされた場合であっても、全体の中でどこの部分の仕事を任されているという理解が必要になります。
どんな仕事であっても、社会にとってどんな役目があり、その仕事をすることで人の役に立っているんだということを教育して行ければと思っています。
難しい話しになりましたが、今回、西鶴間増田屋という蕎麦屋さんで職務を遂行してくれた4名の中学生の皆様、ありがとうございました。
少しでも飲食店の仕事が理解できたら嬉しく思っています。